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パンを焼いてみたいけれど、型に何千円もかけるのは気が引ける。そんなときに真っ先に思い浮かぶのが、ダイソーやセリアの製菓コーナーに並ぶ110円の型です。パウンドケーキ型、ちぎりパン用のスクエア型、紙製のミニ型。棚の前で「これでパンは焼けるのだろうか」と迷った経験がある方は多いはずです。
結論から書くと、100均の型でパンは焼けます。ただし「何でも焼ける」わけではなく、焼けるかどうかは型の大きさと素材でほぼ決まります。ミニ食パン、ちぎりパン、パウンド型で焼くごはん代わりのパンなら110円の型で十分に成立します。一方で、写真映えする角食パン、いわゆる1斤サイズの食パンだけは100均の型では成り立ちません。理由は好みでも腕でもなく、型の内寸という物理的な条件にあります。
この記事では、100均3社で実際に手に入る型のサイズと素材を並べたうえで、アルミ・紙・シリコン・ステンレスで焼き上がりが変わる理屈、1斤型の規格との差、そして「生焼け」「焦げる」「型から外れない」という3つのつまずきの原因を、成分と熱の伝わり方から説明していきます。型を買う前に読んでおくと、無駄な1個を買わずに済みます。
・100均の型で焼けるパンと、焼けないパンの境界線
・ダイソー・セリア・キャンドゥで買える型のサイズと素材の違い
・アルミ・紙・シリコン・ステンレスで焼き色と食感が変わる理屈
・生焼け・焦げ・型離れが起きる原因と、その場で直せる対処
パンの型は100均で足りるのか、結論から整理する

最初に押さえておきたいのは、「100均の型では焼けない」のではなく「100均の型に合うパンがある」という考え方です。型はパンの容器であると同時に、熱の伝え方と生地の形を決める道具でもあります。だから型に合わせてパンを選べば、110円でも問題なく焼き上がります。
焼けるかどうかを決めているのは「型の内寸」だけ
パンが型の中でうまく焼き上がるかどうかは、型の内寸と生地の量が釣り合っているかで決まります。生地は発酵とオーブンの中での膨張で体積が増えるので、型が小さすぎれば溢れ、大きすぎれば高さが出ずに平たいパンになります。100均で買える型の多くはパウンドケーキ型で、ダイソーのアルミパウンドケーキ型Lで幅18〜22cm・奥行7.5〜11cm・高さ5.4cm、セリアのアルミ・パウンドケーキ型Lで22cm×11cm×5cmという寸法です。高さが5cm前後しかない点がポイントで、ここに1斤ぶんの生地を入れると確実に溢れます。逆に言えば、この高さに合う量の生地――ミニ食パンやちぎりパン、惣菜パン数個ぶん――なら、型の側には何の問題もありません。失敗しやすいのは型の質ではなく、レシピの分量をそのまま小さな型に流し込んでしまうケースです。生地量を型に合わせて減らす、これだけで結果が変わります。
110円の型が得意なのはミニ食パンとちぎりパン
100均のパン型が力を発揮するのは、小さくて数が出るパンです。パウンド型で焼くミニ食パンは、高さのある山型にはなりませんが、断面が長方形で切り分けやすく、サンドイッチやトーストに使いやすい形になります。ちぎりパンはスクエア型に小さく丸めた生地を並べて焼くパンで、生地同士が支え合って膨らむため、型の高さがなくても形がまとまります。さらに、ダイソーのアルミパウンドケーキ型は1袋にL3枚入・M4枚入・S6枚入・SS8枚入というように複数枚入っており、同じ型が複数あることそのものが利点になります。1回の焼成で複数個を並べて焼ける、味違いを同時に試せる、失敗しても損失が小さい。専用型を1個だけ持つのとは、練習の回数が変わってきます。
1斤の角食だけは100均の型では成立しない
一方で、蓋をして焼く角食パン、いわゆる1斤の食パンは、100均の型では作れません。1斤食パン型の内寸は約18cm×9cm×9cmが標準で、焼き上がりで約19〜20cm×10〜11cm×11〜13cmになります。注目すべきは高さ9cmという数字で、100均のパウンド型の高さ5.4cmや3.5cmとは倍近い開きがあります。食パンの目の詰まったきめ細かい断面は、生地が四方を囲まれた状態で上へ押し上げられることで生まれるので、高さのない型では同じ構造にはなりません。加えて角食には蓋が必要で、100均の型には蓋がありません。ここは工夫でどうにかなる部分ではないので、角食を焼きたい方は最初から1斤型を買うのが結果的に近道です。
最初の1個は紙かシリコンから始めると成功しやすい
これからパンを焼き始める方には、金属型より紙製やシリコン製から入るという選び方があります。製菓の解説でも「初心者のうちは、紙のパウンド型やちぎりパン用のトレーから始めると、成功体験を作りやすい」とされており、理由は型離れの心配がほぼないからです。焼き上がったパンが型から外れないという事故は、パン作りで最初につまずきやすいポイントで、紙型ならそのまま破いて外せます。シリコン型も同様に、継ぎ目がなく敷紙も不要で、生地がくっつきにくい素材です。焼き色の付き方には差が出ますが、まず「パンが焼き上がった」という状態にたどり着くことを優先するなら、この2つが安全です。焼き色や香ばしさを追い込むのは、次のステップで構いません。

ダイソー・セリア・キャンドゥで手に入る型を並べて比べる
3社の製菓コーナーには、それぞれ性格の違う型が並んでいます。同じ110円でも、素材のラインナップと入り数が異なるため、目的によって行く店が変わります。ここでは公表されているサイズを並べて整理します。
| 項目 | ダイソー | セリア | キャンドゥ |
|---|---|---|---|
| 主な素材 | アルミ | アルミ・ステンレス・紙 | 抜き型・ミニ型 |
| サイズ展開 | L・M・S・SSの4サイズ | L・M・S・SS+ミニ | 小判型のミニサイズ |
| 価格 | 各110円 | 各110円 | 各110円 |
| 向いている用途 | ミニ食パン・まとめ焼き | 素材を選びたいとき・ギフト | 形抜き・小さな焼き菓子 |
※各社の公表サイズ・価格をもとに麦ごよみ編集部で整理
ダイソーのアルミパウンド型は4サイズが揃う
ダイソーのアルミパウンドケーキ型は、L・M・S・SSの4サイズが展開されています。寸法はLが幅18〜22cm・奥行7.5〜11cm・高さ5.4cm、Mが幅15.7〜18.7cm・奥行7.9〜10cm・高さ4.8cm、Sが幅12.5〜16cm・奥行6.3〜8.6cm・高さ4.5cm、SSが幅8〜10.5cm・奥行5〜7.3cm・高さ3.5cmです。入り数はそれぞれL3枚入、M4枚入、S6枚入、SS8枚入で、価格はいずれも110円。素材はアルミで、オーブンでの使用は可能ですが電子レンジには使えません。この「レンジ不可」は見落としやすい注意点で、金属は電子レンジ内で放電するおそれがあるため、余ったパンの温め直しに型ごと入れるといった使い方はできません。焼成専用と割り切って使ってください。サイズ選びで迷ったら、ミニ食パンならM、ひと口サイズを数多く焼くならSSが扱いやすい寸法です。
セリアはアルミ・ステンレス・紙の3素材から選べる
セリアの強みは素材の選択肢です。アルミ・パウンドケーキ型はL3枚入(22cm×11cm×5cm)、M4枚入(19cm×10.8cm×3.5cm)、S5枚入(13.5cm×8.5cm×4.3cm)、SS8枚入(10.5cm×7.5cm×3.5cm)で各110円。これに加えて、ステンレス製のミニパウンドケーキ型が幅6.5cm×長さ14cm×高さ4.5cmで1個110円、さらに紙製の型も茶色のスタンダード色と柄付きの両方が並びます。同じ110円でも、繰り返し使いたいならステンレス、焼いてそのまま人に渡したいなら紙、と目的で選び分けられるのがセリアです。ステンレス製は錆びに強く衛生的で、洗って乾かせば何度でも使えます。ただし熱の伝わり方はアルミより穏やかなので、同じレシピでも焼き色の付き方が変わる点は頭に入れておくと、焼き上がりを見て慌てずに済みます。
キャンドゥは「焼く型」より「形をつくる道具」が中心
キャンドゥで目につくのは、食パン用抜き型セットのように、焼くための型というより形を作るための道具です。抜き型セットは食パンをクマなどの形に抜けるもので、市販の食パンやミニ食パンを使ってキャラクターサンドを作る用途に向きます。ほかにミニバウンドケーキ型のような小判型・小型サイズも110円で並びます。パン生地を一次発酵から焼き上げるための本格的な型を探しに行く店というよりは、焼いたパンをどう見せるか、どう仕上げるかを担当する店だと考えると選びやすくなります。なお100均は店舗ごとに扱う商品と在庫が異なるため、目当ての型がある場合は複数店を回る前提でいた方が無駄足になりません。100均のパン型の価格帯はおおむね110円~220円に収まります。
100均の型を比べるなら、ダイソーで食パン型を探す時の代用の考え方も合わせて読むと選びやすくなります。

素材で焼き上がりが変わる理屈を知っておく

同じ生地、同じオーブン、同じ温度でも、型の素材が違えば焼き上がりは変わります。原因は熱伝導率です。型は生地に熱を伝える中継役なので、その素材が熱を通しやすいか通しにくいかで、クラスト(外皮)とクラム(中身)の状態が変わります。
熱伝導率=その素材がどれだけ熱を通しやすいかを示す性質。金属は高く、紙やシリコンは低い。型の熱伝導率が高いほど生地の外側に早く熱が入り、クラストが先に固まって色づく。クラスト=パンの外皮、クラム=内側の柔らかい部分を指す。
アルミ型が香ばしくなるのは「一気に焼けるから」
100均で最も入手しやすいアルミ型は、熱伝導率が高い素材です。製菓の解説では「アルミなど熱伝導率の高い素材は一気に焼き上がり、クラストがこんがり香ばしくなります。焼成時間が速いため、クラムは水分を維持したふわふわなパンに仕上がります」と説明されています。ここが重要な点で、外がしっかり焼けて中がふんわりするという理想的な組み合わせは、熱が早く入って短時間で焼き上がることの副産物です。焼成時間が短ければ、それだけクラムから水分が抜ける時間も短くて済みます。アルミ型は軽くて扱いやすく、基本的に空焼きも不要なので、100均で1つ選ぶなら最初の候補になります。デメリットは薄くて変形しやすいことと、購入時に油を塗る手間がかかる場合があることくらいです。
シリコン型がべちゃつきやすい理由
シリコン型は型離れが優れており、生地がくっつきにくく、継ぎ目がないので敷紙も要りません。洗って繰り返し使え、錆びる心配もない、扱いやすい素材です。ただし焼き上がりには弱点があります。「シリコンなど熱伝導率の低い素材は、保温性が高いものが多くクラストの水分が抜けにくいため、べちゃっとしやすいのが特徴」とされています。熱が入りにくいうえ、いったん温まると熱がこもるので、パンの表面から水蒸気が抜けきらないまま焼き時間が終わってしまうのです。対策としては、焼き上がったらすぐに型から外して網の上で冷ますこと。型の中に置いたままにすると、こもった蒸気がクラストを湿らせます。また、シリコンは空焼き厳禁で、保管の仕方によっては変形するので、重い物の下に置かないようにします。
紙型は失敗が少ない代わりに焼き色が付きにくい
紙製の型は使い捨てが前提で、焼いたあとそのままラッピングできるのが最大の利点です。敷紙が不要で、型から外す作業もありません。反面、金属に比べて熱の入り方が穏やかなので、焼き色が付きにくいことがあります。ここで焦って温度を上げるのは失敗のもとで、上げるべきは温度ではなく時間です。金属型で焦げやすいときは温度を少し下げて時間で火を通す、紙型で色づきにくいときは最初の温度を保ちつつ後半で数分延長する。この使い分けを覚えておくと、素材が変わっても同じレシピで対応できます。「金属は熱が入りやすく、紙や薄いアルミは穏やかになりやすいため、焼成は型の材質で同じ設定でも結果が変わります」という説明のとおり、レシピの温度と時間はあくまで基準値だと考えてください。
ステンレス型は錆びに強いが焼成が長引く
セリアのミニパウンドケーキ型に使われているステンレスは、錆びに強く衛生的で、耐久性の高い素材です。繰り返し使う前提なら、水気に神経を使わずに済む点は大きなメリットになります。一方で熱伝導性は他の素材より劣り、焼成時間が長くなる傾向があります。冷やして固めるお菓子や湯せん焼きには向く性質ですが、パンのように短時間で一気に火を通したい場面では、アルミほどのキレは出ません。同じレシピをアルミからステンレスに持ち替えると焼き色が薄く出るので、後半に数分足して調整します。オーブンの癖と型の癖が重なると差が広がるため、最初の1回は焼き上がりを見ながら時間を決めるつもりでいると安全です。

レシピどおりに材料を量って、こねて、発酵させて、オーブンレンジに入れた。それなのに焼き上がりは平たくて、皮は厚く、中はしっとりというよりべたついている——パン作…
1斤の型を知ると100均のパン型の限界がはっきりする
「100均の型で食パンは焼けますか」という疑問に答えるには、そもそも食パンの型がどう規格化されているかを知るのが早道です。数字で並べると、どこまでが代用可能でどこからが別物なのかがはっきりします。
| 1斤食パン型の内寸 | 約18cm × 9cm × 9cm |
| 焼き上がりサイズ | 約19〜20cm × 10〜11cm × 11〜13cm |
| 重さの定義 | 1斤=340g以上/0.5斤=170g以上/1.5斤=510g以上 |
| 100均の型との差 | 高さが5cm前後しかなく、角食の構造にはならない |
※公表されている規格値をもとに麦ごよみ編集部で整理
角食パンの1斤を焼くなら、製菓道具店の定番と同じアルタイト製の1斤型が近道です▼
1斤は「340g以上」という重さの定義だった
意外と知られていませんが、食パンの「斤」は型のサイズではなく重さの規格です。日本パン公正取引協議会により、1斤は340g以上、1.5斤は510g以上、0.5斤(半斤)は170g以上と定められています。つまり1斤とは「焼き上がりで340g以上あるもの」という下限の話であって、メーカーによって実際の重さは違います。店で買う食パンの大きさが微妙に違うのはこのためです。この定義を知っておくと、レシピに「1斤分」と書かれた粉量が、あくまでその型に合わせた設計値だと理解できます。100均の型を使う場合は「何斤か」で考えるのをやめて、「この型の容積に合う量はどれくらいか」で考えるほうが、結果が安定します。
内寸18cm×9cm×9cmという壁
1斤型の内寸は約18cm×9cm×9cmで、焼き上がりは約19〜20cm×10〜11cm×11〜13cmになります。長さと幅だけを見れば、セリアのアルミ型L(22cm×11cm×5cm)は近い数字です。しかし高さが5cmと9cmでは、生地が上へ伸びる余地がまったく違います。角食のあの均質な断面は、生地が四方と上下から押さえられた状態で膨らむからこそできる構造で、浅い型では横に広がって終わります。だから100均の型で「1斤の角食を再現する」という目標を立てると、必ず期待外れになります。目標を「切りやすい形のミニ食パンを焼く」に置き換えれば、同じ型が急に使い勝手のいい道具に変わります。道具の限界を先に知っておくことが、いちばん確実な失敗防止策です。
生地量は型に合わせて決める、これが最大のコツ
型選びのポイントは、内寸サイズと生地の量が適切にマッチすることに尽きます。生地が多すぎれば型から溢れて焼きムラの原因になり、少なすぎれば高さが出ずに乾いた仕上がりになります。生焼けの主な原因のひとつが「型の容量に対して生地の量が多すぎる」ことである以上、レシピの分量を守る、あるいは型に合わせて比率を保ったまま減らすのが基本になります。100均の型を使うなら、まずは小さいサイズの型で少量の生地を焼いて、膨らみ具合を見てから量を調整するのが安全です。複数枚入りの型は、この試行錯誤を安く繰り返せるという点で理にかなっています。1斤型を1個買って毎回失敗するより、110円の型で何回か試すほうが、結果的に早く自分の分量が見つかります。
生焼け・焦げ・膨らまない、うまくいかない原因はどこか
型を替えたら失敗した、という声の多くは、型そのものではなく熱の入り方と生地の状態に原因があります。ここでは実際に起きやすい3つのつまずきを、原因から順に見ていきます。
焼きたてのパンは蒸気を含んでいるため、切った瞬間の湿り気だけで生焼けと判断すると誤ります。生焼けかどうかは粗熱が取れた状態で確認するのが正しい手順です。目が詰まっていて全体的に粘りがあり、触ると水分が多くべたつくなら焼き不足を疑ってください。
生焼けを招く5つの原因
パンが焼けきらないときの原因は、大きく5つに整理できます。ひとつ目はオーブンの温度が高すぎるか予熱が不十分なこと。表面だけ先に固まると中まで熱が届きません。ふたつ目は型の容量に対して生地の量が多すぎること。厚みが増せば中心に熱が入るのに時間がかかります。3つ目は発酵不足で、発酵時間はあくまで目安なので、時計ではなく生地の様子を見て判断します。4つ目はイーストが古いこと。使用期限の目安は生イーストで2週間、ドライイーストで半年とされ、これを過ぎたものは膨らむ力が落ちています。5つ目は生地の水分が多すぎること。加水を増やすとしっとりしますが、そのぶん火の通りは悪くなります。100均の型に替えた直後の失敗は、たいてい2つ目、つまり生地量の入れすぎです。

底が白かったら焼き足りていない
焼き上がりの判断で分かりやすいのが、パンの底の色です。底が白い場合は焼きが足りず、中心まで火が通っていない可能性があります。上面はオーブンの上火で早く色づくので、上だけを見て判断すると誤ります。型から外して底を確認する習慣をつけると、判断を間違えにくくなります。とくに紙型やシリコン型は熱の入り方が穏やかで、上面が色づいても底が白いままということが起こりやすい組み合わせです。底が白ければ型に戻して数分追加する、あるいは型から外した状態で天板に直接置いて焼き足す。この一手間があるかないかで、翌日の食感まで変わってきます。判断はいずれも粗熱を取ってから行ってください。
焦げるときは温度を下げて時間で通す
金属型に替えたら表面が焦げた、という場合、原因は熱伝導率の高さです。アルミは一気に熱が入るので、紙型と同じ設定では表面が先に色づきすぎます。この場合の対処は、温度を少し下げて時間を延ばすこと。温度を下げれば表面の色づきが緩やかになり、そのぶん時間をかけて中心まで熱を届けられます。逆に紙型で色づかないときは、温度を上げるのではなく後半に数分延長します。焦げの対策として温度を上げ下げする方向を間違えると、外は黒く中は生という最悪の組み合わせになります。「色は温度、火の通りは時間」と覚えておくと、型を替えても迷いません。オーブンには個体差があるので、自分の機械の癖を1回把握してしまえば、あとは応用が利きます。
型離れとお手入れ、100均の型を長持ちさせる手順
焼き上がったのに型から外れない、という事故は、金属型で起きやすいつまずきです。原因は型の表面の状態と油の塗り方にあり、どちらも準備の段階で防げます。あわせて、使ったあとの手入れも素材ごとに正解が違います。
油は「厚く」ではなく「薄くまんべんなく」
型離れがうまくいかない原因は、油を塗っていないことより、塗り方が雑なことにあります。金属型は表面の状態が仕上がりを左右し、油の塗り方が雑だと外れにくくなります。使うのはショートニングで、オイルスプレーを使って薄く均一に広げるのが基本です。サラダ油のような液体油は避けます。垂れて底に溜まり、膜が厚い場所と薄い場所ができて、薄い部分で生地が張り付くからです。塗り残しが出やすいのは型の四隅と継ぎ目で、外れないときはたいていここが原因になっています。100均のアルミ型は薄いので、無理に引き剥がそうとすると型が歪みます。焼き上がったら網の上で数分置き、型が少し冷めて生地が収縮してから外すと、力を入れずに済みます。
つけ置き洗いが錆びを呼ぶ
使ったあとの手入れで、素材を問わず避けたいのがつけ置き洗いです。水に長く浸すと錆びの原因になり、食洗機の使用も避けるべきとされています。アルミ型やステンレス型は中性洗剤で洗ってから十分に乾かし、水気は素早く拭き取ります。シリコン型も中性洗剤と柔らかいスポンジで洗い、水気を拭き取れば大丈夫です。「あとで洗おう」とシンクに水を張って放置する、この習慣ひとつで型の寿命は短くなります。110円だから使い捨てでいい、という考え方もありますが、洗って乾かすだけで何度も使えるものを1回で捨てるのはもったいない話です。洗ったあとは、紙などに包んで保管すると酸化(錆び)が防げるとされています。引き出しに裸で放り込むより、この一手間が効きます。
アルタイトの空焼きが必要な理由と、100均型には不要な理由
製菓道具店で売られている食パン型に多いアルタイトは、スチールにアルミメッキをした素材で、初回使用時に空焼きが必須です。手順としては170℃で20〜30分焼いたあと、油を塗って220〜240℃でさらに焼成します。この工程で型の表面に油の膜を作り、錆びを防ぎつつ型離れをよくします。使い込むほど油がなじんで扱いやすくなるのはこのためです。一方、100均で買えるアルミ型・ステンレス型・紙型・シリコン型は、いずれもこの空焼きを必要としません。シリコンは空焼き厳禁ですし、紙は言うまでもありません。専用型のブログ記事を読んで「空焼きしなければ」と身構える必要はない、というのは100均型の隠れた利点です。買ってきてすぐ、洗って乾かして油を塗れば使えます。
アルタイト・ブリキ型は「洗わない」が正解のことがある
意外に思われるかもしれませんが、アルタイトやブリキの型は、通常は洗剤で洗いません。専門店の案内では「出来る限り水洗いは避け、型が冷めないうちに拭きそうじします。汚れがひどい場合は柔らかいスポンジで洗ってすぐにオーブンの予熱で水気を取り除いてください」とされています。せっかく育てた油の膜を洗剤で落としてしまうと、また空焼きからやり直しになるからです。ブリキ型も同様に、汚れを拭き取って乾燥させ、必要に応じてオーブンの余熱で水気を飛ばします。長期保管する前だけは洗浄してから油を塗り直します。ここが100均のアルミ・ステンレス型と正反対のところで、素材が違えば手入れの正解も逆になります。「金属の型はとりあえず洗う」と一括りにしないことが、道具を長持ちさせるコツです。製菓道具専門店の型の手入れ解説も参考になります。
目的別に選ぶなら、どの型を手に取るべきか
ここまでの内容をふまえて、読者のタイプごとに向いている型を整理します。同じ110円でも、何を作りたいかで最適解は変わります。
ちぎりパンを作りたい人はスクエア型か浅いアルミ型
小さく丸めた生地を並べて焼くちぎりパンは、100均の型と相性がいいパンです。生地が隣同士で支え合いながら上へ伸びるので、型の高さが5cm前後でも形がまとまります。ダイソーのアルミパウンドケーキ型SS(幅8〜10.5cm・奥行5〜7.3cm・高さ3.5cm)のように小さい型を並べて焼く方法もありますが、ちぎりパンらしい連なった形にしたいなら、生地を並べられる面積のあるL(幅18〜22cm・奥行7.5〜11cm・高さ5.4cm)のほうが向きます。注意点は、生地の間隔を詰めすぎないことです。発酵で膨らむぶんの余裕がないと、押し合って形が崩れます。焼き上がりに白い部分が残るのはちぎりパンでは自然なことなので、底の色で火の通りを判断してください。
焼いてそのまま渡したい人は紙型一択
手土産や差し入れにパンを持っていきたい、という場合は、紙製の型が答えになります。焼いた型のままラッピングできるので、パンを移し替える必要がなく、崩れる心配もありません。セリアには茶色のスタンダード色と柄付きの両方があり、渡す相手や季節で選べます。敷紙も不要で、型離れの失敗もありません。デメリットは使い捨てであることと、焼き色が付きにくいことですが、ギフト用途ではどちらも致命的ではありません。むしろ「焼き色が控えめで柔らかそうに見える」ほうが好まれる場面もあります。日常用は繰り返し使えるアルミやステンレス、人に渡すときは紙、と用途で使い分けるのが現実的です。
毎週焼く人は、どこで専用型に切り替えるか
週に何度も焼くようになると、100均の型では物足りなくなる場面が出てきます。目安になるのは「角食が焼きたくなったとき」と「同じ型で焼き上がりを揃えたくなったとき」の2つです。前者は前述のとおり内寸9cmの壁があるので、1斤型を買うしかありません。後者は、100均のアルミ型が薄く、使ううちに歪んで焼きムラが出てくるためです。逆に言えば、ミニ食パンやちぎりパンだけを焼き続けるなら、100均の型のまま何の問題もありません。実のところ、複数枚入りで同時に焼ける、失敗しても損失が小さい、サイズを細かく選べるという点では、専用型より100均型のほうが練習の道具として優れている面があります。切り替えは「作りたいパンが変わったとき」で十分です。
まとめ
100均の型を選ぶときに見るべきなのは、価格でもデザインでもなく、内寸と素材の2つです。内寸は焼けるパンの種類を決め、素材は焼き色と食感を決めます。ダイソーとセリアのアルミパウンド型はL・M・S・SSの4サイズが揃い、いずれも110円。セリアにはステンレス製のミニパウンドケーキ型(幅6.5cm×長さ14cm×高さ4.5cm)や紙製もあり、繰り返し使うか渡すかで選び分けられます。1斤の角食だけは内寸9cmという条件が満たせないので、そこを狙うなら専用型が必要です。
最初の一歩としておすすめしたいのは、セリアかダイソーのアルミパウンド型Mを1袋買って、手持ちのレシピの生地量を型に合わせて減らし、ミニ食パンを焼いてみることです。複数枚入りなので、同じ生地を2つに分けて焼き時間を変えてみると、自分のオーブンの癖がその日のうちに分かります。焼き上がったら型から外して底の色を見る。これが次の1回を確実に良くします。
※商品のラインナップ・サイズ・在庫は変更されることがあります。購入前に各社の公式サイトや店頭でご確認ください。ダイソーオンラインショップ/キャンドゥ公式サイト

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